LLDPの機能説明
LLDP(Link Layer Discovery Protocol)は、自装置の情報をTLV(type, length, value)形式で定期的に隣接装置に通知したり、隣接装置からの情報を収集したりするプロトコルです。通知できる情報の例は、以下のとおりです。
- シャーシID(必須)
- ポート番号(必須)
- ポートの説明(オプション)
- システム名(オプション)
- システムの説明(オプション)
LLDPの有効化
LLDPを使用するには、装置全体でLLDPを有効化します。物理ポートごとのLLDPDU(LLDP data unit)の送受信設定はデフォルトで有効です。特定の物理ポートでLLDPを無効にする場合は、その物理ポートのLLDPDUの送受信設定を無効にしてください。
装置全体でLLDPを有効化するには、lldp runコマンドを使用します。物理ポートごとのLLDPDU送信設定を変更するには、lldp transmitコマンドを使用します。物理ポートごとのLLDPDU受信設定を変更するには、lldp receiveコマンドを使用します。
LLDPの有効化

装置全体のLLDPを無効にしている装置では、LLDPDU転送を有効化すると、他の装置から受信したLLDPDUを中継できます。デフォルト設定では、LLDPDU転送は無効です。LLDPDU転送の有効/無効を設定するには、lldp forwardコマンドを使用します。
転送されるLLDPDUは、送信ポートの種別にかかわらず常にタグなしフレームの形式で転送されます。
LLDPDU転送の有効化

LLDPの無効化と有効化を頻繁に実行した際、LLDPの初期化が繰り返し実行されることを避けるために、LLDP再初期化の遅延時間を設定できます。LLDPが最後に無効化されてから、遅延時間の間はLLDPが有効化されません。LLDP再初期化の遅延時間は、lldp reinitコマンドで設定します。
隣接装置に通知する情報の設定
物理ポートごとに、LLDPDUに付加して隣接装置に通知する情報を設定できます。通知できる情報は以下のとおりです。()内は使用するコマンドです。
- 管理用アドレス(lldp management-addressコマンド)
Management address TLVで通知する管理用アドレスは、装置のVLANインターフェースまたはループバックインターフェースに設定済みのIPアドレスを指定できます。未設定のIPアドレスや、マネージメントポートに設定したIPアドレスは指定できません。
- Port ID TLVのサブタイプ(lldp subtype port-idコマンド)
Port ID TLVのサブタイプを、ポート番号(例:Port1/0/21)または対象ポートのMACアドレスから選択できます。
- 基本情報(lldp tlv-selectコマンド)
ポートの説明を通知するPort Description TLV(port-description)、システムの利用可能な能力を通知するSystem Capabilities TLV(system-capabilities)、システムの説明を通知するSystem Description TLV(system-description)、システム名を通知するSystem Name TLV(system-name)のそれぞれを、LLDPDUに付加するかどうかを設定できます。
- IEEE 802.1 Organizationally Specific TLVs(lldp dot1-tlv-selectコマンド)
Port VLAN ID TLV(port-vlan)、Port and Protocol VLAN ID TLV(protocol-vlan)、VLAN Name TLV(vlan-name)、Protocol Identity TLV(protocol-identity)のそれぞれを、LLDPDUに付加するかどうかを設定できます。
- IEEE 802.3 Organizationally Specific TLVs(lldp dot3-tlv-selectコマンド)
MAC/PHY Configuration/Status TLV(mac-phy-cfg)、Link Aggregation TLV(link-aggregation)、Maximum Frame Size TLV(max-frame-size)、Power Via MDI TLV(power、PoE対応ポートのみ)のそれぞれを、LLDPDUに付加するかどうかを設定できます。
- LLDP-MED TLV(lldp med-tlv-selectコマンド)
LLDP-MED Capabilities TLV(capabilities)、LLDP-MED Inventory Management TLV(inventory-management)、LLDP-MED Extended Power-via-MDI TLV(power-management、PoE対応ポートのみ)のそれぞれを、LLDPDUに付加するかどうかを設定できます。
LLDPで通知する情報のTTL(Time To Live)値
LLDPで通知する情報のTTL値(隣接装置での情報保持時間)を設定できます。TTL値を超過すると、学習したLLDP情報は削除されます。
TTL値は、LLDPDU送信間隔(秒数)と乗数(Message TX Hold Multiplier)の積で決定されます。たとえば、LLDPDU送信間隔を12秒、乗数を4に設定した場合は、TTL値は、12×4=48(秒)となります。
LLDPDU送信間隔(秒数)は、lldp tx-intervalコマンドで設定します。乗数は、lldp hold-multiplierコマンドで設定します。
LLDPDU送信間隔は、LLDPDUの送信遅延間隔の4倍以上に設定してください。
装置の情報が変更されてから、LLDPDUを送信するまでの遅延時間を設定できます。この時間を適切に設定することで、装置の情報が短時間に頻繁に変更された際に送信されるLLDPDUの数を抑えられます。LLDPDUの送信遅延間隔を設定するには、lldp tx-delayコマンドを使用します。
LLDPDUの送信遅延間隔は、LLDPDU送信間隔の4分の1以下に設定してください。
LLDP-MED対応機器を新規に検出したときの処理回数
LLDP-MED(LLDP for media endpoint discovery)は、機器の設定や管理を効率化するための仕組みです。LLDP-MED対応機器を新規に検出すると、LLDP-MED TLVが付加されたLLDPDUを送信するようになります。ただし、LLDP-MED対応機器が必要な情報を受信したことを確認できないため、LLDP-MED fast start処理を一定回数繰り返して実行します。LLDP-MED fast start処理の実行回数は、lldp fast-countコマンドで設定します。
LLDP情報のクリア
LLDPDUを受信して学習した隣接装置のLLDP情報はTTL値を超過すると削除されますが、clear lldp tableコマンドを使用すると手動で削除できます。また、LLDPに関する統計情報は、clear lldp countersコマンドで消去できます。
LLDP疑似リンクダウン機能
LLDP疑似リンクダウン機能を使用する場合は、自装置と対向装置の両方のポートで有効にして使用してください。LLDP疑似リンクダウン機能を有効にすると、LLDPDUの受信状態や受信内容に基づいて、ポートをLLDP疑似リンクダウン状態に遷移/復旧します。
LLDP疑似リンクダウン機能を有効にしたポートで、リンク障害などによって対向装置からのLLDPDUを受信しなくなったり、対向装置からリンク異常を検知した内容のLLDPDUを受信したりすると、ポートはLLDP疑似リンクダウン状態に遷移します。
LLDP疑似リンクダウン機能を有効にしたポートがリンクアップすると、まだ対向装置の情報を取得していない状態ではLLDP疑似リンクダウン状態になります。対向装置の情報を取得すると、LLDP疑似リンクダウン状態は復旧します。LLDPDUの送信タイミングは対向装置と同期しているわけではないため、自装置側のポートと対向装置側のポートのLLDP疑似リンクダウン状態の復旧タイミングには時間差が発生することに注意してください。
LLDP疑似リンクダウン機能を有効にするには、lldp err-disableコマンドを使用します。
LLDP疑似リンクダウン状態の物理ポートは、show interfaces statusコマンドのStatus項目では"connected"と表示されますが、show interfacesコマンドでは"link status is errDis"と表示されます。また、show interfaces descriptionコマンドのStatus項目では"errDis"と表示されます。
ポートチャネルのメンバーポートがLLDP疑似リンクダウン状態になった場合は、show channel-group channelコマンドのメンバーポートのステータスはhot-sbyになります。
物理ポートで指定したMMRP-PlusのリングポートがLLDP疑似リンクダウン状態になった場合は、show mmrp-plus status ringコマンドやshow mmrp-plus status portコマンドのポートのリンク状態(Link Status項目)は"errDis"と表示され、そのMMRP-Plusリングポートはダウンします。
LLDP疑似リンクダウン使用時の制限事項
- LLDP疑似リンクダウン機能とLACPは、同一ポートで併用できません。
- 物理ポートでLLDP疑似リンクダウン機能とSTP/RSTP/MSTP/RPVST+/ERPS機能は併用できません。
- LLDP疑似リンクダウン状態の物理ポートは、VLANインターフェースではリンクアップしているポートとして扱われます。
- ポートチャネル(スタティックモード)のメンバーポートでLLDP疑似リンクダウン機能を使用している場合、LLDP疑似リンクダウン状態の復旧タイミングは自装置と対向装置で同期していないため、リンクアップ後にポートチャネルのメンバーポートとして復旧するタイミングも同期しないことに注意してください。たとえば、自装置側ポートが先にメンバーポートとして復旧し、対向装置側ポートがまだ復旧していない状態では、自装置側のそのポートから送信したトラフィックは対向装置側で破棄されます。
- ApresiaNPシリーズでは、「Chassis IDとPort IDの組み合わせが同じLLDPDU」を複数ポートで受信するような使い方はできません。各ポートで受信するLLDPDUは、「Chassis IDとPort IDの組み合わせがユニークなLLDPDU」になるようにして使用してください。