第4編
レイヤー2

スパニングツリーの機能説明

スパニングツリーは、レイヤー2におけるループを防止するための機能です。ループを防止しながらネットワークを冗長化できます。

スパニングツリーの機能概要

注 意

各種スパニングツリー(xSTP)とリングプロテクション(ERPS)は、装置内では併用できません。

注 意

各種スパニングツリー(xSTP)とMMRP-Plus は、装置内では併用できません。

注 意

各種スパニングツリー(xSTP)とVLAN変換機能は、同一インターフェース上では併用できません。

注 意

ループ検知機能と各種スパニングツリー(xSTP)を同一インターフェース(ポート、ポートチャネル)上で併用する場合は、事前に対象インターフェースへloop-detection action notify-onlyコマンドを設定してください。

注 意

PVST+は未サポートです。また、RPVST+を使用してPVST+と相互接続することは未サポートです。

スパニングツリーの計算

スパニングツリーを有効化すると、装置に設定したブリッジ優先度などを使用して、ルートブリッジやポートの役割が自動的に決定されます。

装置全体のスパニングツリーを有効化するには、spanning-tree global stateコマンドを使用します。インターフェースごとにスパニングツリーを有効化するには、spanning-tree stateコマンドを使用します。RPVST+を使用する際、指定したVLANのスパニングツリーを有効化するには、spanning-tree vlanコマンドを使用します。

注 意

他のレイヤー2、およびレイヤー3機能(スタック機能を含む)によって、CPUが過負荷となった場合、RPVST+パケットの処理が遅れることがあります。これにより、トラフィックの損失やネットワークトポロジーの変更が発生する場合があります。

スパニングツリープロトコルの設定

スパニングツリーでは、以下の4種類のスパニングツリープロトコルに対応しています。

MSTP(マルチプルスパニングツリープロトコル)

VLANごとにグループ分けし、グループごとにスパニングツリーを計算するプロトコルです。

RSTP(ラピッドスパニングツリープロトコル)

対向のポート同士で直接ポートの役割を決定するプロトコルです。IEEE 802.1wで標準化されています。STPよりもスパニングツリーを短時間で計算できます。

補 足

RSTPは、ポイントツーポイントリンクのみで利用できます。シェアードリンクの場合は、STPが利用されます。

STP(スパニングツリープロトコル)

IEEE 802.1Dで標準化されているプロトコルです。

RPVST+(VLAN単位のラピッドスパニングツリープロトコル)

RSTPと同じ方式で、VLANごとにスパニングツリーを提供するプロトコルです。

スパニングツリープロトコルは、spanning-tree modeコマンドで設定します。

ルートブリッジの選択

ブリッジ優先度が最も小さいブリッジが、ルートブリッジに選択されます。

ルートブリッジの選択

ブリッジ優先度は、spanning-tree priorityコマンドで設定します。RPVST+を使用する際、指定したVLANのブリッジ優先度を設定するには、spanning-tree vlan priorityコマンドを使用します。

ポートの役割の決定

ルートブリッジの選択後、パスコストポート優先度、ポート番号を基に、ポートごとに適切な役割が自動的に決定されます。

ポートの役割には、以下の5種類が定義されています。

注 意

ポートの役割は、スパニングツリープロトコルによって異なります。

ルートポート

通信可能なポートです。ブリッジごとに1ポート存在し、ルートブリッジに最も近いポートです。

補 足

ルートブリッジには、ルートポートは存在しません。

指定ポート

通信可能なポートです。リンクごとに1ポート存在し、ルートブリッジに最も近いポートです。

非指定ポート

データフレームがブロックされ、通信できないポートです。BPDUは送受信できます。

代替ポート

ルートポートの代替ポートです。データフレームがブロックされ、通信できないポートです。BPDUは送受信できます。

バックアップポート

指定ポートの代替ポートです。データフレームがブロックされ、通信できないポートです。BPDUは送受信できます。

ポートの役割

補 足

パスコスト、ポート優先度、およびポート番号は、いずれも小さい値のポートが優先的に利用されます。たとえばパスコストの場合は、インターフェースの速度が速いほど小さくなります。

パスコストは、spanning-tree costコマンドで設定します。RPVST+を使用する際、指定したVLANのパスコストを設定するには、spanning-tree vlan costコマンドを使用します。

ポート優先度は、spanning-tree port-priorityコマンドで設定します。RPVST+を使用する際、指定したVLANのポート優先度を設定するには、spanning-tree vlan port-priorityコマンドを使用します。

スパニングツリーの状態遷移

STPでは、4つの状態が定義されています。

STPの状態遷移

また、RSTPでは、ブロッキング状態とリスニング状態の代わりに、破棄状態が定義されています。

RSTPの状態遷移

BPDU

スパニングツリーでは、BPDU(Bridge Protocol Data Unit)と呼ばれる制御フレームが利用されます。一定時間、BPDUを受信できないと、障害が発生したと認識されます。

BPDUに関して、以下の項目を設定できます。()内は使用するコマンドです。

  • BPDUのマルチキャスト宛先MACアドレス(spanning-tree nni-bpdu-addressコマンド)
  • BPDUのハードウェア転送の有効化(forward-bpdu global enableコマンド)
補 足

BPDUのハードウェア転送は、NP5000の1.08.01以降、NP4000の1.03.01以降、NP2100の1.09.02以降、NP2000の1.09.01以降、NP2500の1.10.01以降でサポートしています。

補 足

スパニングツリープロトコルが有効の場合は、BPDUのハードウェア転送を有効にできません。

補 足

BPDUのハードウェア転送を使用する場合は、spanning-tree modeコマンドはデフォルト設定のままで使用してください。また、BPDUのソフトウェア転送も無効(デフォルト設定)のままで使用してください。

  • BPDUのソフトウェア転送の有効化(spanning-tree forward-bpduコマンド)
補 足

装置としてソフトウェア転送可能なBPDUの最大レートは64Kbpsです。

トポロジー変更通知(TCN)のフィルタリング機能の設定

トポロジー変更通知(TCN)は、ブリッジからルートブリッジに送信されるBPDUです。トポロジーの変更が発生すると、トポロジー変更通知(TCN)がフラッディングされます。フィルタリング機能を有効化すると、インターフェースで受信したトポロジー変更通知(TCN)を、他のインターフェースへ伝達しなくなります。

トポロジー変更通知(TCN)のフィルタリング機能を有効化するには、spanning-tree tcnfilterコマンドを使用します。

スパニングツリータイマー

スパニングツリーでは、以下のタイマーが用意されています。

ハロータイム

装置がBPDUを定期的に送信する間隔です。2秒に設定した場合は、2秒に1回BPDUが送信されます。

フォワードタイム

リスニング状態からラーニング状態へ移行する際、およびラーニング状態からフォワーディング状態に移行する際に待機する時間です。

最大エージタイム

障害が発生したと判断されるまでの時間です。BPDUが受信できないまま最大エージタイムが経過すると、障害が発生したと判断され、スパニングツリーの再計算が行われます。

転送保留カウント

送信するBPDUの上限の数(バーストサイズ)を設定できます。

ハロータイム、フォワードタイム、最大エージタイムは、spanning-tree (timers)コマンドで設定します。転送保留カウントは、spanning-tree tx-hold-countコマンドで設定します。RPVST+を使用する際、指定したVLANのハロータイム、フォワードタイム、最大エージタイムを設定するには、spanning-tree vlan (timers)コマンドを使用します。

ポートのリンクタイプの設定

ポートの対向に、装置が直接接続されているか、ハブなどを使用して複数の装置が接続されているかを設定します。

リンクタイプには、以下の2種類があります。

ポイントツーポイントリンク

対向に装置が直接接続されているリンクです。

シェアードリンク

ハブなどを使用して、対向に複数の装置が接続されているリンクです。

ポートのリンクタイプ

ポートのリンクタイプは、spanning-tree link-typeコマンドで設定します。

Port Fastモードの設定

Port Fastモードをエッジポートに設定すると、パソコンなどBPDUを送信しない機器を接続した場合に、リンクアップ後の転送遅延時間を待つことなく、すぐにフォワーディング状態に遷移させることができます。

Port Fastモードは、spanning-tree portfastコマンドで設定します。

ルートガードの設定

ルートブリッジのルートガードを有効化すると、優先度が高いBPDUを受信しても、ルートポートの再計算を行いません。

ルートガードは、spanning-tree guard rootコマンドで有効化します。

MSTPの設定

MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)を使用すると、グループごとにスパニングツリーの再計算を行うため、影響のないグループは再計算されず、再計算に関する処理負荷を抑えることができます。

MSTPの概要

MSTPのグループには、以下の3種類があります。

MSTPインスタンス

MSTPにおける最小のスパニングツリーを構成するグループです。MSTPインスタンスにVLANを割り当てることで、複数のVLANを1つのグループとして扱うことができます。MSTPインスタンスのルートブリッジをインスタンスルートと呼びます。

MSTPリージョン

同じ設定を共有するMSTPインスタンスのグループです。MSTPインスタンスを1つのブリッジとみなして、スパニングツリーを構成します。MSTPリージョンのルートブリッジをCISTリージョナルルートと呼びます。

CIST(Common and Internal Spanning Tree)

MSTPリージョン外の装置も含めた全装置のグループです。MSTPリージョンを1つのブリッジとみなして、スパニングツリーを構成します。CISTのルートブリッジをCISTルートと呼びます。

補 足

1つの装置が、インスタンスルート、CISTリージョナルルート、およびCISTルートを兼ねる場合もあります。

MSTPリージョンの区別

各装置に設定された以下の情報が一致した装置が、同一のMSTPリージョンに属すると判定されます。MSTPリージョンを区別するための設定は、spanning-tree mst configurationコマンドを使用して、MSTPコンフィグレーションモードに遷移して行います。()内は使用するコマンドです。

  • リージョン名(nameコマンド)
  • リビジョン番号(revisionコマンド)
  • MSTPインスタンスとVLANの関連付け情報(instanceコマンド)

MSTPリージョンの区別

MSTPインスタンスによるスパニングツリーの計算

MSTPでは、MSTPインスタンスを1つのブリッジとみなし、MSTPインスタンスに設定されたブリッジ優先度やポート優先度などを使用して、CISTリージョナルルートやポートの役割が決定されます。

MSTPインスタンスごとに設定できる情報は以下のとおりです。()内は使用するコマンドです。

  • ブリッジ優先度(spanning-tree mst priorityコマンド)
  • パスコストおよびポート優先度(spanning-tree mstコマンド)

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