CFMの機能説明
IEEE 802.1agで規格化されたConnectivity Fault Management(以後、CFM)は、「レイヤー2ネットワークにおける、複数の装置間での障害監視」を目的とした機能です。
CFMでは、以下のようなことが可能です。
- CCM(Continuity Check Message)による定常監視
- CFMループバックテスト(レイヤー2ネットワークでの疎通確認)
- CFMリンクトレース(レイヤー2ネットワークでの経路探索)
装置全体でCFMを有効化するには、cfm global enableコマンドを使用します。インターフェースごとにCFMを有効化するには、cfm enableコマンドを使用します。
MMRP-Plusのリングポートでは、CFMを有効化しないでください。
CFM機能を使用する場合、CFM PDUを送受信するポートはトランクポート(switchport mode trunkコマンド)に設定してください。
メンテナンスドメイン(MD)およびメンテナンスアソシエーション(MA)
メンテナンスドメイン(以後、MD)は、レイヤー2ネットワークをドメインレベルで階層的に管理するための管理グループです。ドメインレベルの範囲は0~7で、0が最も低いレベル、7が最も高いレベルです。また、メンテナンスアソシエーション(以後、MA)は、MDに監視対象VLANを紐付けた管理グループで、MDごとに最低でも1つはMAを設定する必要があります。
同一監視対象VLANでドメインレベルの異なるMDを使用する場合は、MDが隣接している構成や、低いレベルのMDが高いレベルのMDよりも内側に入れ子になっている構成を設計できます。
設計可能なMDの構成例
なお、同一監視対象VLANでドメインレベルの異なるMDが交差するような構成はできません。
設計不可能なMDの構成例
MDを作成するには、cfm domainコマンドを使用します。MAを作成するには、cfm maコマンドを使用します。
メンテナンスエンドポイント(MEP)およびメンテナンス中間ポイント(MIP)
CFMを使用するには、同一ドメインレベルで同一監視対象VLANのMAに、複数のメンテナンスポイントを設定して配置する必要があります。メンテナンスポイントには、以下の2種類が存在します。
- メンテナンスエンドポイント(以後、MEP)
MEPはMAの管理境界(終端ポイント)に配置され、CFM PDUの送受信とフィルタリング(破棄)を行います。
MEPは、配置する方向によってUp MEPとDown MEPの2種類に分けられます。Up MEPは、Up方向(配置したポートの装置内部方向)で同一ドメインレベルのCFM PDUを送受信します。Down MEPは、Down方向(配置したポートの装置外部方向)で同一ドメインレベルのCFM PDUを送受信します。どちらの場合も、自身のドメインレベルより低いレベルのCFM PDUや、逆方向から受信した同一ドメインレベル以下のCFM PDUはフィルタリング(破棄)され、中継しません。しかし、自身のドメインレベルより高いレベルのCFM PDUは中継します。
注 意同一MAではUp MEPとDown MEPを同時に設定できません。
- メンテナンス中間ポイント(以後、MIP)
MIPはMAの中間ポイントに配置され、一部のCFM PDUへの応答処理を行います。
MEPおよびMIP
MEPを作成して有効にするには、あらかじめmepid-listコマンドでMEP IDリストに登録してからcfm mepコマンドで作成し、mep enableコマンドで有効化します。また、MIPの作成方法を設定するには、mip creationコマンドを使用します。
CCM(Continuity Check Message)による定常監視
CCMは、各MEP間の定常監視を行うためのメッセージです。各MEPから定期的に送信され、レイヤー2ネットワークの障害監視を行います。CCMを有効化するには、ccm enableコマンドを使用します。CCMの送信間隔を設定するには、ccm intervalコマンドを使用します。
CCMによる定常監視
MEPで検出できる障害種別
MEPで検出できる障害は、以下のとおりです。優先度が低い順に記載しています。()内はshow cfm mep faultコマンドのStatus項目、またはshow cfm mepidコマンドのHighest Fault項目で表示される情報です。
- DefRDICCM(Some Remote MEP Defect Indication)
RDIビットがセットされたCCMを受信。
- DefMACstatus(Some Remote MEP MAC Status Error)
Port Status TLVまたはInterface Status TLVを介してエラー状態を示すCCMを受信。
- DefRemoteCCM(Some Remote MEP Down)
設定したMEP IDリストに所属するMEPからのCCMを受信できていない状態。
- DefErrorCCM(Error CCM Received)
MEP IDが重複したCCM、MEP IDリストにないMEP IDのCCM、CCM送信間隔設定が異なるCCMなど、無効なCCMを受信。
- DefXconCCM(Cross-connect CCM Received)
他のMAからの可能性があるCCMを受信。
障害アラーム(SNMPトラップ)
障害アラーム(SNMPトラップ)の送信対象にする障害種別を指定するには、fault-alarmコマンドを使用します。
MEPで障害を検出すると、障害アラームの送信遅延タイマーが開始されます。送信待機時間が経過しても障害が存在している場合に、障害アラームが送信されます。なお、送信待機時間の間に複数の障害が検出された場合は、最も優先度の高い障害の障害アラームのみが送信されます。
障害アラームが送信された後に新たな障害を検出すると、前の障害よりも優先度が高い場合は、新しい障害アラームがすぐに送信されます。前の障害よりも優先度が低い場合は、新しい障害アラームは送信されません。
MEPで検出したすべての障害がなくなると、障害アラームのリセットタイマーが開始されます。リセット待機時間が経過しても障害が存在していない場合に、障害アラームはリセットされます。
障害アラームの送信待機時間、およびリセット待機時間を設定するには、alarm-timeコマンドを使用します。
AIS(Alarm Indication Signal)機能
AIS機能は、MEPで検出した障害を、よりドメインレベルが高いMEPに通知する機能です。AISの有効/無効、AISフレームの送信間隔とドメインレベルを設定するには、aisコマンドを使用します。
LCK(Lock Signal)機能
LCK機能は、メンテナンスなどの目的で対象のMEPが使用不可状態になる可能性があることを、よりドメインレベルが高いMEPに対して手動で通知する機能です。LCKフレーム送信の開始/停止を行うには、cfm lck start/stopコマンドを使用します。LCKの有効/無効、LCKフレームの送信間隔とドメインレベルを設定するには、lckコマンドを使用します。
CFMループバックテスト
CFMループバックテストは、レイヤー2ネットワークでの疎通確認機能です。CFMループバックテストを実施したMEPからLBM(Loop Back Message)を送信し、LBMを受信した宛先のMEPまたはMIPがLBR(Loop Back Reply)を応答します。CFMループバックテストを実行するには、cfm loopback testコマンドを使用します。
CFMループバックテスト
CFMリンクトレース
CFMリンクトレースは、レイヤー2ネットワークでの経路探索機能です。CFMリンクトレースを実施したMEPからLTM(Link Trace Message)を送信し、LTMを処理したMIPまたはMEPがLTR(Link Trace Reply)を応答します。CFMリンクトレースを実行するには、cfm linktraceコマンドを使用します。結果を表示するにはshow cfm linktraceコマンドを、結果を削除するにはclear cfm linktraceコマンドを使用します。
CFMリンクトレース