スタックの機能説明
スタックは、複数の装置をスタックポートで接続し、論理的に1台の装置として動作させる機能です。複数の装置を1台の装置として管理できるため、管理対象を減らすことができたり、後からスタックメンバーを増設して柔軟にポート数を増やしたりできます。
スタック機能が有効になると、スタックポートに設定した物理ポートはスタック専用ポートになるため、通常の物理ポートのような使用はできなくなります。
スタックを構成する複数の装置それぞれをスタックメンバーと呼びます。スタックメンバーには、それぞれボックスIDが割り当てられます。
スタックの構成例

スタックトポロジー
スタックを構成するには、自装置のスタックポート1またはスタックポート2と、他の装置のスタックポート1またはスタックポート2を接続して構成します。
スタックを構成する場合は、スタックポート間の直接接続のみをサポートしています。スタックポート間をスイッチングハブやメディアコンバーターなどの他の装置で中継する構成は、サポートしていません。
スタック構成ではスタックマスターのみコンソール経由でログイン可能です。そのため、運用性を考慮して、スタックを構成する装置はなるべく近くに設置して運用することを推奨します。
スタックの構成方法には、リングトポロジーとチェーントポロジーの2種類があります。リングトポロジーは、複数の装置をリング状に接続して構成します。チェーントポロジーは、複数の装置を直線状に接続して構成します。
スタックトポロジー

リングトポロジーでスタックリンクの1つに障害が発生した場合は、チェーントポロジーに変更されることで通信を継続できます。しかしながら、チェーントポロジーでスタックリンクの1つに障害が発生すると、スタック構成が分離されてネットワーク内に同じ設定のスタック装置が2台存在することになり、正常な管理や通信ができなくなる可能性があります。そのため、スタックを構成する場合は、各装置の2つのスタックポートを使用するリングトポロジーの接続を推奨します。
スタックポートになるすべての物理ポートを1つのスタックポート(ポートチャネル)にする2台限定のチェーントポロジーという接続方法もあります。2台限定のチェーントポロジーでは、スタックリンクの帯域幅が増加します。2台限定のチェーントポロジーにするには、stack bandwidthコマンドでchainオプションを指定して設定します。この場合、装置のスタックポートは1つだけのため、chainオプションを指定して設定した2台の装置を接続し、スタックを構成します。
chainオプションを使用した接続方法

スタックメンバーの役割
スタックを構成すると、各スタックメンバーには「マスター」「バックアップマスター」「スレーブ」のいずれかの役割が割り当てられます。これらの役割はスタックの優先度によって決定されます。スタックの優先度はstack my_box_priorityコマンド、またはstack priorityコマンドで設定します。値が小さいほど優先度が高くなります。各役割の説明を以下に示します。
設定 | 帯域幅 |
---|---|
マスター |
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バックアップマスター |
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スレーブ |
|
スタックLEDでの確認(NP7000、NP5000、NP2500)
NP7000、NP5000、NP2500では、装置の左上にスタックLEDがあります。スタックが有効化され、スタックメンバーの役割が決定すると、自装置のボックスIDに対応するS1~S4のいずれかのスタックLEDが点灯します。緑色に点灯している装置がマスターで、橙色に点灯している装置がバックアップマスターまたはスレーブです。
スタックLEDの例

スタックID LEDでの確認(NP4000、NP3000、NP2100、NP2000)
NP4000、NP3000、NP2100、NP2000では、装置の右下にスタックID LEDがあります。スタックが有効化され、スタックメンバーの役割が決定すると、スタックID LEDに以下の内容が表示されます。
- マスターに決定した装置では、ボックスIDとH(大文字)が交互に表示されます。
- バックアップマスターに決定した装置では、ボックスIDとh(小文字)が交互に表示されます。
- スレーブに決定した装置では、ボックスIDのみが表示されます。
スタックID LEDの例

スタック機能の制限事項および注意事項
- スタックを構成可能な装置の最大数は「4台」です。
- スタック機能が有効になると、スタックポートに設定した物理ポートはスタック専用ポートになるため、通常の物理ポートのような使用はできなくなります。
- スタックを構成する場合は、スタックポート間の直接接続のみをサポートしています。スタックポート間をスイッチングハブやメディアコンバーターなどの他の装置で中継する構成は、サポートしていません。
- スタック構成ではスタックマスターのみコンソール経由でログイン可能です。
- スタックメンバーのファームウェアのバージョンはすべて同じにしてください。ファームウェアのバージョンが異なる場合はスタックを構成できません。
- NP7000、NP5000、NP3000でスタックを構成する場合、スタックを構成するすべてのスタックメンバーで、レイヤー3ライセンスの有無を統一してください。
- ApresiaNPシリーズ以外の機器はスタック構成に含められません。
- 異なるApresiaNPシリーズが混在するスタックは構成できません。同一のApresiaNPシリーズでのみスタックを構成できます。
- ファームウェアのバージョンがAEOS-NP2000 Ver. 1.09の場合のみ、NP2100とNP2000が混在するスタックを構成できます。
- ApresiaNP2100-48T4X、ApresiaNP2100-48T4X-PoE、ApresiaNP2000-48T4X、およびApresiaNP2000-48T4X-PoEでは、stack bandwidth 10G 4-port設定時は、chainオプションは併用できません。
- ApresiaNP2100-48T4X、ApresiaNP2100-48T4X-PoE、ApresiaNP2000-48T4X、およびApresiaNP2000-48T4X-PoEでは、stack port-channel mode partialコマンドはサポートしていません。
- プリエンプトモードが無効の場合は、マスターの優先度は「0(最も高い優先度)」で動作するようになります。そのため、プリエンプトモードが無効なスタック構成において、稼働状態の別の装置(マスターになっていて優先度「0」で動作中)をスタック構成に追加すると、同一優先度のためMACアドレスの比較によるマスターの再選出が行われることに注意してください。追加した別の装置にマスターが切り替わってしまうことを防止するには、追加する装置の電源を落とした状態でスタック構成へ接続し、その後に電源を入れて起動してください。
- プリエンプトモードが有効なスタック構成において、現在のマスターより優先度の高い装置がマスターに切り替わる場合には、ポート閉塞を伴うマスター再選出プロセスが動作するため、一定の通信断時間が発生します。
- また、プリエンプトモードによってマスターが切り替わる場合には、「2台の稼働中のマスターの優先度が比較されて、優先度の高い方がマスターとして残り、優先度の低い方がバックアップマスターになる」という動作になるため、その後のスタックのMACアドレスはマスターになった装置のMACアドレスになることに注意してください。
- 3台以上のリングトポロジー構成でスタックメンバー装置を再起動させると、スタックの起動プロセスが終了するまで、スタック装置間を経由する学習済みユニキャストの中継が停止することがあります。
3台以上のリングトポロジー構成で、交換時などにスタックメンバー装置を復旧させる場合は、片方のスタックケーブルのみを接続した状態で起動し、一度チェーントポロジーでスタック構成に取り込みます。その後、もう片方のスタックケーブルを接続する手順で復旧させることで、本注意事項を回避できます。
- スタック構成では、各スタックメンバー装置が個々にMACアドレスを学習します。学習したMACアドレスは、CPUを介してスタックメンバー装置間で同期を行います。そのため、スタック構成全体でFDB同期が完了するまでには、非スタック装置の場合よりも多くの時間を要します。
- スタック構成において、スタックメンバー装置を跨ぐポート間でステーションムーブが発生(学習済みのMACアドレスが登録状態のまま、別のスタックメンバー装置のポートでフレームを受信して再学習)した場合、初回フレーム受信時には再学習されないことがあります。また、FDB同期の仕組みの制限により、再学習されずに該当MACアドレスがMACアドレステーブルから削除されることがあります。このような場合でも、移動先のポートで再度フレームを受信することで正常に再学習されます。
- マスターがダウンして切り替わった場合、OSPFv2(改善前のバージョン)/OSPFv3はリスタートします。マスター以外のスタックメンバーがダウンした場合はリスタートしません。また、スタックメンバーの復旧・新規追加時は、マスターの切り替わりの有無にかかわらず、OSPFv2/OSPFv3はリスタートします。
NP7000の1.06.01以降、NP5000の1.06.01以降、NP3000の1.06.01以降では、マスターがダウンして切り替わった場合でも、OSPFv2がリスタートしないように改善されています。それより前のバージョンでは、マスターがダウンして切り替わった場合、OSPFv2はリスタートします。
- プリエンプトモードが有効で、スタックメンバーの復旧・新規追加時にマスターが切り替わる場合は、ポート閉塞を伴うマスター再選出プロセスの影響で、RIP/RIPngも一度クリアされます。また、プリエンプトモードが無効で、マスターが切り替わらない場合でも、復旧・新規追加されたスタックメンバーで受信したRIP/RIPng学習経路宛ての通信は、他装置からのRIP/RIPngパケットを一度受信するまでは中継されません。
- スタックメンバーが追加され、マスターの切り替わりが発生した場合は、VRRP機能がリスタートします。また、装置の障害や復旧が発生し、追加されたスタックメンバーが新たにマスターになる場合も、VRRP機能がリスタートします。
- スタックメンバーの障害や復旧が発生したとき、および装置が追加または削除されたときに、マスターの変更が発生する場合は、PIM機能がリスタートします。