光伝送技術について
光ファイバーの種類
光ファイバーの分類は、大きく2つ
マルチモードファイバー
数m~数百mの短距離伝送用です。ビル内や機器間の配線に使われます。
シングルモードファイバー
数km以上の中~長距離伝送用です。都市内・都市間伝送、国際海底通信などに使われます。
長距離伝送に使われるのはシングルモードファイバー
- シングルモードファイバーは、通信事業者がFTTH(Fiber to the Home)などの通信サービスを提供 したり、長距離通信を中継したりするのに使われます。
- 「ダークファイバー」(光が通っていない不使用のファイバー)として通信事業者や公的機関から貸出されるものは、基本的にはシングルモードファイバーです。
- 当社の伝送装置の多くは、シングルモードファイバーで数km~数百km伝送することを前提としています。
光の減衰と伝送距離
光信号は、光ファイバー中で減衰
- 光ファイバーは、窓ガラスと比べて、光信号に対して高い透過性を持っています。それでも距離を進むにつれて光信号は弱まっていきます。
- たとえば、100kmの光ファイバーを進むと、光信号の強さ(光パワー)は約1000分の1になります。
※1550nmの光信号に対し1kmあたり0.3dBの減衰量(ロス)を持つ一般的なシングルモードファイバーの場合 - 当社の光伝送装置は、長距離の光ファイバーで通信できるように、十分強い光信号を送信し、弱まった光信号も高感度に検知します。(対応できる距離は、機種により異なります)
光パワーとロスの計算方法
- ロスは一般に、「dB(デシベル)」という単位を使って表されます。
ロス (dB) =-10×log10 (出力光パワー/入力光パワー)
- 例)
- 光ファイバーのロスで光パワーが1/1000に減衰する場合、dBで表示すると
-10×log10 1/1000=-10×(-3)=30(dB)
- 光ファイバーの1kmあたりのロスが分かっていれば、長さを掛け算して伝送路全体のロスを見積もることができます。
- 例)
- 光ファイバー1kmあたり0.3dBのロスで、長さが80kmの場合の伝送路のロスは
0.3(dB/km)×80(km)=24(dB)
- 光伝送装置の仕様には、伝送可能なロスの値(許容ロス)が記載されています。伝送路のロスが、光伝送装置の許容ロス以下であれば、その装置を使うことができます。
- 例)
- 伝送路のロスが24dBの場合、許容ロス25dBの光伝送装置を使えるか検討
伝送路のロス24dB≦装置の許容ロス25dB⇒使用可
※お客様の内規・ポリシーにより、マージンの確保が必要な場合があります。
伝送距離と波長分散の計算方法
- 1550nm付近の波長を使う伝送装置では、波長分散によっても伝送距離が制限されることがあります。波長分散とは、波長の差によってシングルモードファイバー中を進む速度が異なるため、長距離伝送後に光信号の品質が劣化する現象です。
- 波長分散は、「ps/nm(ピコセック・パー・ナノメートル)」という単位を使って表されます。
- 光ファイバーの1kmあたりの波長分散が分かっていれば、長さを掛け算して伝送路全体の波長分散を見積もることができます。
- 例)
- 光ファイバー1kmあたり+20ps/nmの波長分散で、長さが80kmの場合、
+20(ps/nm/km)×80(km)=+1600(ps/nm)
- 光伝送装置の仕様には、伝送可能な波長分散の値(分散耐力)が記載されています。光伝送装置の分散耐力が、伝送路の波長分散の範囲内であれば、その装置を使うことができます。
- 例)
- 伝送路の波長分散が+1600ps/nmの場合、
装置の分散耐力-300~+1600ps/nm⇒使用可
装置の分散耐力0~+1400ps/nm⇒使用不可
伝送距離計算についての補足
- 当社では光伝送装置の性能を、光ファイバーの長さではなく、許容ロスで仕様化しています。同じ距離の伝送路であっても、光ファイバーの古さや、敷設の際の曲げ方、コネクタでの損失、監視装置の配置などによりロスは大きく異なるためです。
- 特にダークファイバーを使って通信を行う場合、所望の区間で借用できる光ファイバーのロスを事前に確認しておく必要があります。また、2地点間の直線距離に比べ、大幅に迂回した経路の光ファイバーしか入手できない場合もあります。
- 一部の機種では、伝送路のロスが小さいと受信光パワーが強すぎて装置の故障や通信エラーを起こす場合があります。受信光パワーが仕様値を満たさない場合は、意図的に適切なロスを追加する「光アッテネーター」という器具を使用します。
一心双方向伝送技術
1本の光ファイバーで通信が可能
- 一般的な光伝送方式では、1回線あたり2本の光ファイバーを使って通信します。これは、送信と受信をそれぞれ1本の光ファイバーで行っているためです。
- ApresiaTransportでは、1回線あたり1本の光ファイバーで通信が可能です。(一心双方向伝送仕様の機種のみ)
- 一心双方向伝送の機種では、特定の波長を出力する送信器と、波長によって光信号を選り分ける「波長フィルター」を搭載しています。これによって、光ファイバー上では送信と受信の光信号を混在させつつ、装置の中では分離することができます。
波長多重(WDM)技術
多数の回線を1本の光ファイバーに収容
- 波長フィルターは、多数の回線を1本の光ファイバーに束ねることもできます。この技術は、波長多重(Wavelength Division Multiplexing、WDM)と呼ばれています。
▶ 対応機種:OPX-4140DW
- 「波長多重技術」と一心双方向伝送を組み合せて、1本の光ファイバーで多数の回線の送信と受信を同時に行うこともできます。これにより、光ファイバーの使用効率を高め、必要本数を大幅に減らすことができます。
▶ 対応機種:OPX-3016DW、XGMC-2016、XGMC-2016用WDMフィルタカード(OPL-3016DW、OPL-3008DW)
波長多重方式は、多重される波長同士の間隔によって大きく2つに分類されます。
- CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)
波長間隔が広く、光ファイバー1本あたりの収容回線数が限られています。
標準的な波長間隔は20nmであり、シングルモードファイバーの損失が低い1550nm帯の波長で伝送する場合、4~8回線程度の多重ができます。 - DWDM (Dense Wavelength Division Multiplexing)
波長間隔が狭く、光ファイバー1本あたりの収容回線数が大きく取れます。
標準的な波長間隔は約0.8nm(周波数100GHzグリッドの場合)であり、1550nm帯では40回線程度の多重ができます。
現在当社では、光ファイバー1本あたりの収容回線数が大きく、通信のビット単価を下げることができるDWDM方式の製品展開を進めています。
▶ 対応機種:XGMC-2016、XGMC-2101LDW-PSR、OPX-3016DW